2010年11月15日月曜日

鉄道遺産のゴールデントライアングル

北海道遠軽町丸瀬布・陸別町・上士幌町を訪ねて

日本鉄道保存協会2010年度総会開催~
 日本鉄道保存協会の2010年度総会・見学会が10月7日から9日まで北海道で開かれ、会員ら50人が参加した。初日の総会は、森林鉄道用蒸気機関車「雨宮21号」を動態保存している遠軽町丸瀬布の「マウレ山荘」で行われた。
 代表幹事団体?交通協力会の菅建彦理事長(交通ペンクラブ会員)、佐々木修一遠軽町長のあいさつのあと、同町産業課担当係長、小山信芳さんが「雨宮21号の動態保存への足跡」を発表した。
 雨宮21号は1928(昭和3)年に東京の雨宮製作所で製作されたSLで、かつては国鉄石北本線丸瀬布駅構内から山奥深くに敷設された森林鉄道で活躍した。1980年に修復され、現在は「丸瀬布いこいの森」内の2㌔区間で運転されている。牽引する木造客車は西武山口線で使用されていたもの。井笠鉄道(岡山県)が廃線となって、西武鉄道が取得した。
 続いて4団体が活動報告。旧国鉄池北線陸別駅構内で気動車を体験運転している「りくべつ鉄道」について陸別商工会副会長の山本周二さん。JR西日本広報部の三谷竜平さんは「鉄道遺産を調査・保存することが社会貢献につながる」と鉄道記念物への取り組みを紹介した。
 岡山県の「片上鉄道保存会」代表の森岡誠治・直子夫妻は、吉ケ原駅の駅長猫「コトラ」の本が出版されたことなどを楽しく紹介した。
 「馬路村やなせ森林鉄道運営委員会」(高知県)の会長の清岡博基さんは、1911(明治44)年に誕生した森林鉄道の橋梁、隧道等の14の構造物が国の重要文化財に指定され、保存活動に誇りが生まれたと報告した。
 最後に北海道教育大学の今尚之准教授が「北海道の近代化遺産の保存と活用」の講演をした。2011年度の総会は、新たに開館する「JR東海・リニア鉄道館」で開催することが決まった。
 2日目は「りくべつ鉄道」のある陸別町に会場を移した。廃線から3年、鉄道は不滅として地域住民と町が力を合わせて気動車の動態保存をしている。金沢紘一町長の歓迎のあいさつのあと、道内8団体が活動報告。
 幌内鉄道関連資料や道内を走った旧国鉄の名車を保存展示する三笠鉄道村(三笠市)、夕張炭鉱廃坑とともに消えた鉄道の車両を保存管理する三菱大夕張鉄道保存会(夕張市)、海底から採掘する石炭の運搬列車の「釧路臨港鉄道友の会」(釧路市)、国鉄旧士幌線のコンクリートアーチ橋群を国登録有形文化財として保存している「NPOひがし大雪アーチ橋友の会」(上士幌町)、小樽市手宮にある総合博物館の歴史的鉄道車両の保存整備を行う「NPO北海道鉄道文化保存会」(小樽市)、旧根室本線狩勝で20系ブルートレインなどの歴史的車両の保存を進める「NPO旧狩勝線を楽しむ会」(新得町)、釧網本線でイベント列車の運転などを行う「MOTレールクラブ」(網走市)の代表らが次々に登壇。これを受けて陸別町総務課の佐々木敏治さんが道内各団体の緩やかなネットワークの設立を提案、拍手で賛同された。
 3日目の9日は士幌線の廃線跡見学。上士幌町長・竹中貢さんの歓迎あいさつを受けて、貸切りバスで回った。案内は「NPOひがし大雪アーチ橋友の会」の角田和久事務局長ら。糠平川に沿って残る駅ホームの痕跡、軌道敷、お目当てのコンクリート橋など鉄道遺産の魅力を楽しんだ。
 旧糠平駅舎跡に建設された鉄道資料館を見学、手作りトロッコの体験乗車もあった。
 (米山淳一・交通ペンクラブ会員・日本鉄道保存協会顧問)