2010年7月27日火曜日

山手線恵比寿駅にホームドア

島秀雄さんの訴え、ようやく実現へ

 
 ホームドアが山手線恵比寿駅に設置され、6月26日から使用されている=写真。8月28日には目黒駅でも始まり、JR東日本は山手線の残る27駅にも2017年度までに設置する方針だ。投資額はざっと500億円。 
 現場へ行ってびっくりしたのは、ホームドアが途切れていたこと。地下鉄のように、ホームの長さ全部に設置されていないのだ。7号車と10号車の部分は「空き」になっている。山手線車両が4つ扉と6つ扉が混在しているためで、来年8月ごろには山手線を走る52編成がすべて4つ扉となって、ホームドアも完備される。 
 東海道新幹線の生みの親・島秀雄さんが戦前から訴えていたのが、ようやく実現の一歩を踏み出した形だ。

2010年7月26日月曜日

和やかに懇親パーティー

交通ペンクラブ総会

 交通ペンクラブの2010年度総会が7月6日午後5時から日本交通協会大会議室で開かれた。曽我健代表幹事が09年度の収支や事業の報告、松浦和英監事が会計監査報告をした。総会終了後は阿部恂さんが乾杯の音頭を取り=写真=たっぷり2時間、暑気払いの懇親パーティーが続いた。

懇親パーティー

 七夕前日の7月6日に開かれた交通ペンクラブの2010年度総会と暑気払い懇親会。JR東日本の清野智社長は6月28日、シカゴで開催された高速鉄道セミナーについて「マスコミの皆さんは、明日にも発注がありそうなことをいわれますが、いろいろな条件をクリアしなくてはならないので、まだまだ先の話です。JR東日本も売り込みに全力をあげておりますが」などと述べた。








 











 このセミナーは前原誠司国土交通大臣を先頭に、官民一体で日本の新幹線技術をトップセールスしようというねらいで開かれたもので、JR東海の田中宏昌顧問(元副社長)も参加、清野社長とともに、日本の新幹線経験を話した。

懇親パーティー



















 あいさつは1人だけで、続いて日経新聞OBの阿部恂さんが乾杯の音頭をとった。あとはそれぞれがなごやかに歓談、閑談、懇談、政談、放談……。元国鉄常務理事だった竹内哲夫さんが「彼は私が秘書課長のときに採用したんだ」と指差した先にいたのは、JR東日本の深澤祐二常務(55歳)。竹内さんは昭和28年入社、深澤常務が昭和53年入社だから25年、4半世紀を隔てた先輩・後輩だった。

 出席者は次の通り (敬称略・五十音順) 阿部恂、石田孝男、岩崎雄一、魚住明、江頭誠、小澤耕一、大沢宏海、大塚陸毅、荻野洋、柏靖博、河合恭平、河合茂美、上地啓理、川田啓貴、城内秀定、隈部紀生、小清水忠、鈴木隆敏、杉本伸明、清野智、関原誠一、曽我健、竹内哲夫、竹田正興、堤哲、柘植康英、富田哲郎、中澤一弘、中島啓雄、西川由朗、野沢太三、野中雅志、二川和弘、古屋成正、深澤祐二、本田勇一郎、前田喜代治、牧久、松浦和英、三上栄太郎、三坂健康、宮澤勝己、水野弥彦、室賀實、柳井乃武夫、山田能正、山本佳志、薬師晃、吉澤眞、米山淳一





廃止から存続・維持・再生へ

大きく変わり始めた地方鉄道の現状


                            交通新聞 上里 夏生

 今は一部のレールは残っていても、列車が走ることはない北海道ちほく高原鉄道、くりはら田園鉄道、鹿島鉄道――。2000年度から2008年度までに廃止された鉄軌道は全国25路線、574・1㌔に上る。東京―大阪間を超す距離の鉄路が日本から姿を消した計算だ。国土交通省鉄道局によると、2005年度時点で営業中だった全国の中小私鉄92社の営業成績は、黒字が19社、赤字が73社。全体の8割が赤字という現状が地方鉄道の厳しい経営環境を物語る。 
 しかし、今後本格化する高齢化社会を考えれば、鉄道の役割を全面的に自動車(マイカー)に置き換えるのは難しい。運輸政策研究機構の調査によると、地方都市では運転免許のない地域住民は全体の2割程度。仮に本人は免許がなくても、家族に送迎してもらえば不便を感じないので、公共交通の必要性はなかなか表面化しにくい。 
 だが、地方鉄道や路線バスの減便や廃止で免許や自動車を持たない高齢者が日常生活に不便をきたす事例は少なくない。75歳以上の高齢者は一般に外出をあきらめてしまう傾向にあり、高齢者が増えるこれからの時代、地方鉄道や路線バスの維持・再生に代表される、交通弱者を意識したきめ細かい交通政策が求められるのは事実だ。

◇交通基本法制定へ 
 昨年9月に誕生した民主党を中心とする新政権は地域公共交通の維持・再生を柱の施策に掲げ、法制面の裏付けとなる「交通基本法」の制定を打ち出した。国土交通省は同11月から交通基本法検討会を連続開催し、今年4月には新法の骨格を公表。自由に移動できる権利を「移動権」と命名し、交通基本法では移動権保障を生存権の一つとして認めることとした。6月22日には前原誠司国土交通大臣が新法の基本指針を発表し、一般からの意見をパブリックコメントとして7月22日まで募った。 
 基本方針では、自動車に過度に頼る現代社会の問題点を「自動車に過度に依存する社会となった結果、気が付くと高齢者や障がい者に不便な社会になり、自動車を使える人と使えない人の間で大きな格差が発生した」と指摘。こうした社会形態を「交通の格差社会」と名付けた。 
 国交省は来年年明けの通常国会に交通基本法案の提出を目指すが、全国の自治体や事業者にとって気になるのは国による助成額。この点について、三日月大造国土交通副大臣は全国の自治体関係者や事業者を集めた6月18日の「地域公共交通全国会議」の基調講演で、「交通基本法が成立すると、国の地域公共交通に対する助成額は年間1000億円規模で必要になる」と述べ、地域公共交通活性化・再生法(通称)による現在の助成額年間200億円程度に比べ大幅な増額を示唆した。

◇生まれ変わる地方鉄道  
 交通弱者の増加や地球環境問題への関心の高まりを背景に地域公共交通が注目を集める中で、地方鉄道もまた自己改革の道を歩み始めた。地方鉄道維持・再生のモデルとされるのが茨城県。同県では2005年に日立電鉄、2007年には鹿島鉄道が廃止されたが、県や沿線自治体は存続に向けた十分な努力なしに鉄道を廃止した手法を反省。事業者が廃止の意向を打ち出した茨城交通湊線に関しては、県や地元のひたちなか市が出資する3セクのひたちなか海浜鉄道に経営を移管して存続させることとした。 
 県や市は3セク移行に当たり、社長を公募するという新しい経営手法を採用。公募で選ばれた吉田千秋社長は富山地方鉄道から万葉線(旧加越能鉄道)に移り、万葉線存続に向けて努力。海浜鉄道では、沿線の子どもたちがデザインした動物を車体に描いた「アニマルトレイン」の運転などで常に話題をまいている。 
 海浜鉄道のように経営トップを公募した3セク鉄道は、山形鉄道、いすみ鉄道(千葉県)、北条鉄道(兵庫県)の3社あり、英国の航空会社・ブリティッシュエアウェイズから転じたいすみ鉄道の鳥塚亮社長は、訓練費用約700万円を訓練生が自己負担するという、公募による乗務員(運転士)養成という新しい人材育成手法を発案し、マスコミに大きく取り上げられた。 
 このほか、次世代型路面電車のLRTを整備して都市内の交通を再生する動きが宇都宮市や大阪府堺市、岡山市で起きるなど鉄軌道をめぐる話題は尽きない。地方鉄道は今、減便・廃止から維持・再生へと大きく舵を切りつつある。

鉄道の素晴らしさを体感しよう

8月5日から大鉄道博2010 東京・高輪グランドプリンスホテル新高輪で


 大鉄道博2010が8月5日(木)から31日(火)まで、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪の大宴会場「飛天」で開催される=写真はポスター。夏休みの親子連れイベントとして大好評で、昨年に引き続き企画コーディネーターとして元日本ナショナルトラスト事務局長の米山淳一氏(交通ペンクラブ会員)が参画している。 
 昨今の異常とも思える鉄道ブーム。産経新聞6月21日付「〝鉄ちゃん〟市場が熱い」によると鉄道ファンは約2万人、市場規模は40億円(野村総合研究所のオタク市場予測チーム)。鉄道模型の小売店売り上げは平成20年が約133億円と平成17年以降、右肩上がりを続け、まさに不況知らず、と紹介されている。 
 乗り鉄、撮り鉄、録り鉄……「鉄分」の濃淡がいわれるが、最近の特徴は鉄子、ママ鉄などと呼ばれる女性ファンの進出だ。 
 そこで「この勢いを借りて鉄道の魅力を大いにアピールし、合わせて私たちの生活文化としての鉄道の素晴らしさを体感していただく場として企画しました」と米山コーディネーター。 
 旧国鉄、JR、関東地区の大手私鉄の特急列車にスポットを当て、観光や通勤の視点から歴史や車両に関連した展示と同時に、Oゲージ(実物の45分の1)、HOゲージ(同80分の1)の模型車両を巨大ジオラマ上で運転する。 
 環境に優しい鉄道の紹介や人力で動かす「てトロ」による体験鉄道、鉄道で働く人たちの仕事を体験してもらうコーナーも設けるなど、3世代で楽しめるよう工夫されているという。この他、写真家広田尚敬氏の写真展、昭和の町並み展、プラレールの特別運転展示など盛りだくさんの内容だ。

「鉄道少年団」が創立50周年

 財団法人交通道徳協会(室賀實会長)が運営し、ことし創立50周年を迎える「鉄道少年団」の活動ぶりを紹介する展示コーナーもつくられる。 

 「鉄道少年団」は1960(昭和35)年10月22日、鉄道少年の会として東京で誕生し、2年後に鉄道少年団と名称を変更した。現在、旭川から鹿児島まで全国に55団、約1500人の団員がいる。団員は10歳以上18歳未満の男女。その目的は鉄道を愛し、公徳心を高め、団体生活を通じて互いに助け合う心を養い、進んで社会に奉仕する健全な心身を育てること。 
 10ある「約束」が崇高だ。①名誉を重んじます②礼儀を正しくします③親切を尽くします④規律を守ります⑤清潔と質素につとめます⑥約束を守ります⑦正直で誠実を旨とします⑧人に迷惑をかけません⑨正しいことは勇敢にのぞみます⑩常に感謝の心を忘れません。 
 夏休みに公徳キャンプ全国大会を開いているほか、日常活動として駅や車内でマナー向上をよびかけたり、清掃美化活動をしたりしている。

瀬戸内海の七つの島を舞台に

瀬戸内国際芸術祭2010開催中


 瀬戸内海に浮かぶ七つの島で、世界各国から著名なアーティストが参加して瀬戸内国際芸術祭2010「アートと海を巡る百日間の冒険」が7月19日から10月31日まで開催中だ。JR四国はアクセスに利用される瀬戸大橋線快速「マリンライナー」にヘッドマークをつけて運行したり、企画チケットを売り出すなど、増収策に追われている。 
 会場となる七つの島は、面積の大きい順に小豆島、豊島(てしま)、直島、女木島(めぎじま)、男木島(おぎじま)、大島、犬島。0・54平方㌔と一番小さい犬島が岡山県で、あとは香川県に属している。 
 小豆島は映画「二十四の瞳」のロケ地で知られるが、アートといえば直島だ。フェリーで宮浦港に着くと、草間弥生の作品に迎えられる。現代美術の島に来たことを実感する。古民家を再生した「家プロジェクト」が点在する。1990年前後から福武書店(現ベネッセコーポレーション)創業者・福武哲彦氏が直島を文化村にと、建築家の安藤忠雄氏の設計で美術館とホテルをつくった。2004年にはモネの「睡蓮」などを展示する「地中美術館」もオープンした。2代目の總一郎氏によるもので、08年には犬島に、廃墟となっていた銅の精錬所を再生して美術館「精錬所」を開館している。 
 さらに「豊島美術館」がことし10月開館する。豊島といえば産業廃棄物の不法投棄問題で揺れたゴミの島だが、總一郎氏が理事長をつとめる直島福武美術館財団が、建築家・西沢立衛氏とアーティスト・内藤礼氏とのコラボレーションで建設中だ。總一郎氏は、この瀬戸内国際芸術祭2010の総合プロデューサーなのである。 
 映画「喜びも悲しみも幾歳月」の舞台になった男木島、大洞窟が発見されて鬼が島といわれる女木島。いずれも風光明媚だが、人口は減るばかりの過疎の島。高松市はこのイベント期間中、女木・男木航路の通常運賃(大人片道)を4割引きにして高松―女木200円、高松―男木300円とする。また島内は起伏が激しいことからレンタサイクルに電動自転車も置いた。 
 七つの島で芸術作品をつくり上げたのは、18カ国・地域の75組のアーチストら。高松からすべての島に船便が出ているが、全島を巡ってこのイベントを満喫するには、4泊5日から1週間は必要、と主催者のHPにあった。

グループライユ展

 「70の手習いなんですよ」。柳田真司さん(81歳)は照れくさそうに笑った=写真右。東京・新宿のギャラリーで7月4日から10日まで開かれた「第14回グループライユ展」の会場で。 
 出品した作品は、長崎のハウステンボスと、新宿駅南口を俯瞰(ふかん)した2点。明るい色づかいで、メルヘンチックな油絵である。 
 「NHKの通信教育講座でパソコンを習ったのですが、引き続き絵の講座をとりましてね。そのあと先生について描き始め、この会の出品は7回目になります」 
 グループライユ(フランス語で線路)は、絵を描くことが趣味の鉄道関係者の集まりで、日本交通協会が発行している『汎交通』表紙絵の東京駅を描いた元国鉄常務理事の長浜正雄さんらが結成。14回展は32人が52点を出品した。日本交通協会理事長の前田喜代治さんは「東京駅ラッピング」と「第二有楽架道橋橋脚」の2点=同左。JR西日本元社長・会長の南谷正二郎さんも安芸の宮島を描いた「みちしお」を出展している。

都市対抗野球

 8月27日東京ドームで開幕する第81回都市対抗野球大会。JR4チームの初戦の相手は――。JR四国は28日午後6時から前年優勝の狭山市Honda、JR東日本は29日午後2時から日本生命、JR九州は30日午後6時から日立製作所、JR北海道は31日午前10時半から三菱重工名古屋だ。 
 前評判が高いのはJR九州。昨年の社会人野球日本選手権大会で優勝しているうえ、ことしのJABA四国大会でも優勝しているからである。前身の門鉄は戦前の1936(昭和11)年の第10回大会に優勝、旧国鉄・JRを通じて唯一、優勝旗に名前を残している。 
 JR北海道はJABA岡山大会で優勝、JR九州同様に今秋の社会人野球日本選手権大会の出場を決めている。JR東日本は07年に決勝で東芝に敗れ、準優勝に終わった。昨年は予選敗退。ことしは第1代表で本大会出場を決めたが、就任6年目の堀井哲也監督は「次の目標は、選手全員が分かっている」と、黒獅子獲得に闘志を燃やしている。JR四国は、選手24人全員が四国各県の高校球児。平均年齢23歳という若々しいチームだ。「全員野球で初戦突破」を目指す。             

叙勲

 交通ペンクラブ会員の元国鉄技師長、半谷哲夫氏が2010年春の叙勲で瑞宝重光章を受章した。伝達式は5月7日に皇居で行われた。

例会

◇第215回=9月17日「ファッションビジネスの魔力―世界に進出する日本のソフトパワー」
㈱イッセイ・ミヤケ前社長・太田伸之氏 

◇第216回=11月19日「EUから見た日中関係」
ニューズウィーク東京支局長・土野(ひじの)繁樹氏

交通ペンサロン

◇8月、9月はお休み。

▽10月28日(木)

▽11月25日(木) 

いずれも午後5時から日本交通協会ラウンジで。会費1千円。

2010年7月23日金曜日

214回例会 「参院選の結果と政局の行方」

第214回 「参院選の結果と政局の行方」

毎日新聞主筆・岸井成格氏