2010年2月1日月曜日

山手線にホーム柵

島さんの訴えが実現

 JR東日本は、2010年度中に山手線恵比寿駅と目黒駅のホームに「可動式ホーム柵」を設置する。ホームから乗客の転落事故を防ぐ、安全・安心の確保が目的だ。「やっと私の提案を採用してくれた」と一番喜んでいるのは、東海道新幹線生みの親、故島秀雄さんだと思う。 
 プラットホームに欄干を、という提言を島さんがしたのは、1983年の『学士会報』Ⅲ号だった。翌84年1月には当時の仁杉国鉄総裁に「ホームの安全柵」設置を求める手紙を出している。 
 島さんは書いている。〈私にはプラットホームは「荒波逆巻く岸辺に突き出した桟橋」のように、「急流に渡した一本橋」のように、イヤそれ以上に危ない場所に見える〉 
 戦前、従弟の慶大生が神戸駅で、入ってきた客車に乗ろうとする乗客に押されて線路上に転落、轢死した。鷹取工場の機関車係長をしていた島さんは病院に駆けつけたが、従弟の最後の言葉は「汽車は危ないから気を付けなさいよ」だった。 
 以来、島さんはホーム上にランカン柵の設置を訴えてきたが、「お金がかかる」などの理由で「とてもできない相談」と見向きもされなかった。それがやっと実現されることになったのだ。すでに都営地下鉄や東京メトロ南北線、丸の内線など、ゆりかもめ、JR東日本でも長野新幹線や東北新幹線の一部駅で設置されているが、在来線は初めてである。 
 まず恵比寿駅と目黒駅に取り付け、その結果を見ながら、山手線全29駅で、おおむね10年後には設置完了する予定だ。 
 この可動式ホーム柵の新設は、JR東日本が「グループ経営ビジョン2020―挑む―」で示した、グループ全体で取り組む「挑戦」という位置づけになっている。 
 山手線のピーク時1時間当たりの輸送量は2008年度、外回り上野―御徒町間で8万3200人、内回り新大久保―新宿間で6万4560人。列車本数は外回り25本(2分20秒ヘッド)、内回り24本(2分30秒ヘッド)。世界でも類のない超過密線区である。          (編集部・堤哲)