2009年2月1日日曜日

第三セクター鉄道の現況

                                                  平野 雄司    
 第三セクター鉄道として最初にスターとしたのは、昭和59年4月1日開業の三陸鉄道(岩手県)。それから24年過ぎた現在、第三セクター鉄道等協議会(所在地・東京都墨田区)に加盟しているのは35社で、各社の経営環境は厳しさを増す一方だ。 

 国鉄の地方ローカル線時代から利用者が少なく、政府、国鉄の手に負えなかった路線ばかり。少子高齢化などの進む昨今、経営環境が一挙に好転するわけがない。昨年4月には三木鉄道(兵庫県)が廃止され、現在の35社になったが、他にも複数の会社が存廃議論の中にある。  

 それでも平成19年度の36社経営成績(三木鉄道を含む)では、黒字会社があった。鹿島臨海鉄道(茨城県)、北越急行(新潟県)、愛知環状鉄道(愛知県)、伊勢鉄道(三重県)、智頭急行(鳥取県)の5社で、経常利益21億1000万円を計上した。背景には主要都市間を結ぶJR特急の乗り入れやJRと連携する企画きっぷ販売などが大きく貢献しており、多くの場合、その成功例に目を奪われている。 
 しかし、残る路線は現状維持すら危ういところが目立ってきており、地域の生活を守る鉄道としての役割が問われ続けている。  

 平成19年度の輸送実績は5587万人、対前年度64万人増(1・1%)だが、21社で輸送人員が減少、3%以上の減少となった会社は10社に達した。 さらに経営成績では、赤字会社31社合計で経常損失32億4000万円を計上しており、利用者の減少に加えて、これ以上に台風、地震などの施設損壊や老朽設備の修繕、燃料費等への出費は耐え難いとしている。  

 そうした中で国は「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を施行し、同法を一部改正、鉄道事業に対して公有民営方式による新しい道筋を開いた。内容は、施設等を地方自治体等が保有し、列車運行は鉄道事業者が受け持つもので、これまでの上下分離方式の考え方をより充実させた法律とされている。 
 これによって鉄道が広い層にわたって国民共有財産として見据えられるようにすることを狙っているが、地方自治体とのつながりが深い第三セクター鉄道各社は、その実効性に大きな期待を寄せている。    (元交通新聞)