2010年5月1日土曜日

メトロもモノレールも日本製

 70年前までの漁村が驚愕の変貌
 
 アラブ人は体格が良く、身長があり太っている。そのためか、機内の座席はゆったりとしている。上級クラスになれば全員横になって休める。 
 機内食は和風もあるが、やはりアラブの味付けが美味。アナウンスはアラビア語、英語、マレー語、日本語、ヒンドゥ語、北京経由では中国語も加わる。 
 出発時にはコーランがとなえられる。ドリンクメニューはワイン、ビールはもちろん、スピリッツとしてバランタインズ、ゴードンズ、バカルディ、リキュールもコアントロー、ベイリーズなど豊富にそろえている。       
                       
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 ドバイの危機が言われているが、長兄格のアブダビがドバイを支えている。 
 アブダビの王家はしっかりした運営をしていて、年間産油量が増大して収入が増えると、基本的なインフラ――道路、港湾、空港、通信、公共的建物を建設・整備した。 
 よい例が今年1月に完成した世界一高いドバイのタワーである。 
 地上828㍍のタワーはドバイの誇りであるが、工事中に資金不足になり、労働者のストライキもあったようだ。これをさっと支払ったのがアブダビで、タワーの名称は「バージュ・ハリファ」アブダビのハリファ王の塔と呼ばれることになった。 
 大勢の人が一気につめかけて、エレベーターは不調になったらしい。現在は日本企業も入って内部工事のためにエレベーターを動かしているという。    
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 アブダビ空港を出ると、幅広い道路が真っ直ぐに伸びている。車は高速で160㌔から130㌔で走る。  
 ドバイ市内に入ると、道路わきに無人運転のドバイメトロの高架線が目に入る。 
 日本企業が作ったもので全長50㌔。将来、路線は伸びる計画である。これも初めての鉄道に家族連れがワーッと集まって満員ラッシュになったという。ドバイの人は楽しみの対象として鉄道から景色を見るつもりだったのだろう。 
 始発駅まで車で行き、降りてすぐ勤め先があるならよいが、その先はタクシーというのは面倒と、利用者はまだ限られている。 
 海を埋めたてた椰子の木型別荘地パーム・ジュメイラの幹の部分を走る無人モノレールも同様に「ゆりかもめ」の技術による日本製だが、乗車している人は少ない。 
 車の渋滞に悩んでいる現状を打開するために、7カ国を結ぶ鉄道を発注するという噂がある。     
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 それにしても、70年ほど前までは漁村だったアブダビ、ドバイが最先端の近代都市となり、世界の建築家が競ってすばらしいデザインの高層ビルを建て、豪華絢爛のアラブの美術の枠を極めたモスク、夢のような贅沢なホテルが林立するさまは驚嘆するほかはない。 
 ドバイはフリーゾーンを設けて税を免除し、自由貿易と投資を盛んにし、上質なブランド品を世界に売り出してきた。いまこの国には6000社の企業が集中し、アブダビはパリのルーブル美術館やニューヨークのグッゲンハイム美術館の分館も招く計画があるという。 
 大人のためのディズニーランドのようなドバイの人口は、自国民が10~15%で、あとはインドなど他国からきた働き手が占める。こんな人口構成は日本人に受け入れられるだろうか。 
 昔ながらの庶民のスーク(市場)もいたって健在。大型商業施設モールには、さまざまな国の人が買物に来ている。 テロの話は聞かない。〝幸福のアラビア〟という言葉はまだ実在している。     
                   
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 ドバイの発展は果たして終わったのだろうか。 
 オフィスビルの一等地にも空室ができて不動産は値段が下がり、ホテル代も安くなった。 
 モノレールやメトロも日本企業への支払いが止まってしまったが、契約通り工事を完成させた日本は改めて信頼されたそうだ。 
 ドバイの人々はアブダビが救ってくれると信じているようだが――。 
 気温35度という暑さだが砂漠の風はさわやかで、アラビア湾の空も海も美しい。 
 日本はこの王様たちの国から85%の石油を得て成り立っている。仕事をしようと思ったら何よりも人対人の信用と友情が大事だと、大手石油会社の幹部が語ってくれた。 
 交通ペンクラブの皆様、一緒に行ってみませんか?          
                                 (元交通新聞)