2008年10月9日木曜日

時速350キロは「世界の常識」

続々誕生する高速鉄道



 北京五輪を前に8月1日北京―天津間120㌔に最高時速350㌔の高速鉄道が開通した。アジアでは日本、韓国KTXソウル―釜山間412㌔、台湾高鉄台北―高雄間345㌔に次いで4番目。1964(昭和39)年に開業した東海道新幹線の息子たちが世界中に続々誕生する勢いだ。
 海外鉄道技術協力協会の秋山芳弘技術本部部長によると、現在時速250㌔以上の高速鉄道を運行しているのは、ヨーロッパでフランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ベルギー、イギリスの6カ国。オランダのアムステルダム―ロッテルダム―ベルギー国境120㌔が今年中に開業予定だ。ロンドンとパリ、ブリュッセル(ベルギー)間の高速列車「ユーロスター」をはじめEU諸国は高速鉄道で相互に結ばれるようになって、鉄道の利便性はますます上がっている。
 「鉄道の時代は終わった」どころか、「鉄道復権」の時代になっているのである。計画中を調べると、ロシアではモスクワ―サンクトペテルブルグ間650㌔、トルコではアンカラ―イスタンブール間576㌔。南米アルゼンチンのブエノスアイレス―コルドバ間710㌔と、アフリカ・モロッコのケニトラ―タンジール間200㌔の高速鉄道建設をフランスが受注した。
 このほかアジアではインド、ベトナム、インドネシア、中東のサウジアラビア、南米ブラジルはサッカーW杯が開催される2014年までにリオデジャネイロ―サンパウロ間に建設したいと国家プロジェクトで推進中だ。
 「フランスのTGVは東海道新幹線の息子で、イタリアのディレッティシマの従兄弟」といわれる。ヨーロッパの高速鉄道の最初は、イタリアのローマ―フィレンツェ間に建設された高速新線「ディレッティシマ」(イタリア語で「最も真っ直な」という意味)のうちローマからチタ・デラ・ピエーベまでが1977年2月に部分開業したのだ。TGVの部分開業より4年も早かった。
 スピードへの挑戦に一番熱心なのはフランス国鉄だ。2007年4月3日、TGVがパリ―ストラスブールを結ぶ新路線での試験走行で時速574・8㌔を記録、レール上を車輪で走る列車としては90年にTGVが達成した515・3㌔の世界最高速度の記録を17年ぶりに更新したと発表した。
 レール上を車輪で走る列車のスピードは、時速300~350㌔程度が限界で、それ以上のスピードを出すと車輪が空回りする(粘着力がゼロになる)といわれていたが、最高時速350㌔は「世界の常識」になりつつある。
 東海道新幹線は最高270㌔。カーブ(曲線半径)がきつく、線路はバラスト(小石)仕様なのでこれ以上のスピードアップは難しいといわれる。一番の自慢は開業以来、死亡事故ゼロを続けていることだ。そのあとに建設された山陽新幹線、東北・上越新幹線、長野新幹線、九州新幹線は300㌔走行も可能だ。
 71歳で国鉄総裁に就任して、周囲の猛反対をはねのけて東海道新幹線の建設に邁進した十河信二さん(81年没、97歳)の炯眼に感服するほかない。